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〈『大正新脩大蔵経』テキストデータベース化〉支援募金のお願い(勧募状)

一 大蔵経について

 社会に定着した宗教は単なる教理と実践の体系だけで構成されるものではありません。各地の伝承と融合しながら人々の生活と思想を豊かに育み、文化として発展してきました。インドで起こった仏教も例外ではなく、今日までの二千数百年の間に、中央アジアから中国、朝鮮、日本に展開して大乗仏教の華を開かせ、一方、東南アジアでは、テーラヴァーダ仏教として根強い伝承を定着させています。チベット及びモンゴルにはチベット系仏教があり、そして、現代ともなると、仏教各派の教えはヨーロッパ、アメリカ等にも移入され、根を下ろしつつあります。

 そうした仏教文化をになってきた大きな媒体の一つが厖大な経典群であることは言うまでもありません。釈尊の入滅後に「経」と「律」が編纂され、後に哲学的教理的な議論である「論」が成立しました。経・律・論は次第にその内容を豊富なものとしつつ、「三蔵」(トリ・ピタカ)と総称されて発展してきます。

 「三蔵」、ないし、まとめて「一切経」、の内容は仏教の教理や思想のみではありません。仏教は宗教的な生活文化の複合体として発展、伝承されてきたため、各時代、各地域で伝承され、新たに創り出された仏典には、歴史的な事項から社会、経済、天文や地理、医学と科学、文学、風俗や民俗、習慣等が盛り込まれ、仏教文化の大百科事典ともいうべき内容を含んでいます。しかも、それぞれの地域的特色が盛り込まれますので、東南アジアにはパーリ語による「三蔵」が発展し、人々の信仰、思想形成に資しています。

 中国でもインド以来の「三蔵」の翻訳ばかりではなく、独自の仏教伝承を発展させ、それに応じて厖大な仏典が作成されました。経、律、論、註釈、史伝など広範囲におよぶ文献が著述、編纂されています。八世紀になると、こうした「一切経」の目録が作られ、典籍が集められ、「大蔵経」としてまとめられ始めます。仏典は最初は書写によって伝承されていたのですが、印刷技術の発展に伴い、版木を作って印刷するようになった最初の「大蔵経」は北宋の太祖による『勅版大蔵経』といわれています。西暦十世紀末のことです。以降、中国、朝鮮等では契丹版、明版、高麗版などが作られました。

 日本でも奈良時代には「一切経」書写などが行われており、また種々の写本や木版「大蔵経」が輸入保存されています。そして、江戸時代には、天海僧正の寛永寺版とか、有名な鐵眼道光による黄檗版の「一切経」、あるいは明治期の『大日本校訂大蔵経』や『卍大蔵経』などが作成されました。こうした経緯の上に編纂されたのが『大正新脩大蔵経』です。高楠順次郎博士を中心とする日本の仏教界の先達たちの努力で、大正11年から昭和9年まで、十数年かけて完成されたものです。インド、中国、朝鮮、日本で編述され、用いられてきた諸仏典の集録範囲の広さ、数量の豊富さ、整理された分類と使いやすさ、そして学問的正確さなどから、世界で最上の「大蔵経」とされています。今日、日本の各宗派で重用する経典のほとんども含まれていますし、日本のみならず世界の学者が研究し、引用するのがこの『大正新脩大蔵経』であり、世界に誇れる日本の大きな文化遺産と言えましょう。

二 大蔵経テキストデータベース化の意義と動向

 『大正新脩大蔵経』は厖大であるため、使いこなすことは容易ではありません。それだけにテキスト全体がデータベース化され、インターネットその他を通じて日本や諸外国の人々に無料公開されて、誰でも簡単に使えるようになると、便利さはこの上ないものとなります。特定の言葉や語法を検索することも簡単になりますし、異訳や異本を比較して正確な本文を作成することも容易になるでしょう。すでにデータベース化が進んでいるパーリ語やチベット語等の仏典との比較対照も可能になります。インターネット上で公開されている仏教辞書や論文データベースとの連動も簡単です。時と共に、様々な新しい活用法も展開してくるものと思われます。

 それだけに、「大蔵経」のデータベース化は緊急の課題として強く要請されています。又そのための技術も急速に進みました。こうした趨勢の中、平成6年(1994)以来、故江島惠教東京大学教授を中心として発足した「大蔵経テキストデータベース研究会」(「SAT」)は、東京大学人文社会系研究科インド哲学仏教学研究室を拠点に、いち早く『大正新脩大蔵経』のテキストデータベース化を進めてきました。この仕事は文部省科学研究費をはじめとする公的援助と有志からのご寄付のもと、「SAT」委員のボランティアによって推進され、平成10年(1998)3月には、世界に先駆けてインターネット上に『大般若経』600巻等の無料公開に踏み切りました。また同年6月、台湾の同種の組織である中華電子仏典協会(「CBETA」Chinese Buddhist Electronic Association )から、著作権問題を含め協力要請があり、交渉の結果、『大正新脩大蔵経』全百巻のうち、図像部等を除く85巻のデータベース化を「SAT」と「CBETA」が協力してすすめることになりました。「CBETA」は豊富な予算を背景に、積極的に仕事を進めており、作業のスピードという点では、日本は予算の制約もあって大きく遅れています。しかし、日本撰述部のデータベース化および(「CBETA」で入力している)インド・中国撰述部を含め『大正新脩大蔵経』のデータベース全体を正確で最も使いやすいものにする仕事は、日本の「SAT」の責任において行うことになっています。完成の暁には、そのすべてをインターネットで無料公開します。又、大蔵出版株式会社の許可のもとに、CD-ROM化し、対象を限定して無料配布をする予定です。

三 データベース化のための資金援助のお願い

 ところで、この事業には厖大な資金を要します。「SAT」の事業は今までは文部省の科学研究費と善意のご寄付でまかなわれてきたのですが、とても充分とは言えません。しかし、この仕事はどうしても完成されなければなりません。日本の文化遺産を今後、世界的に生かしていくために必須の仕事です。そして、今、データベース化できなければ、今後、日本人が加わっての仕事は不可能と思われます。なにより『大正新脩大蔵経』という優れた出版を成し遂げたのが日本の仏教学界の先達たちである以上、データベース化を行うのも日本の仏教者の責務であると私たちは考えています。
 『大正新脩大蔵経』85巻全てが無事データベース化され、インターネット上で無料公開されれば、将来的には、全世界の学者、研究者、仏教者がこのデータベース化された大蔵経を用いて仕事をすることになりましょう。その意味から、このデータベース化の仕事は21世紀にかけての平成大蔵経の開版と言ってもいい意義をもっています。

 資金さえあれば順調に仕事を進められるのですが、その資金が不足しています。具体的なデータベース化を実行する「SAT」は優秀な技術者をもっています。すでに国内外のデータベース推進会議での貢献などを通して、仏教関係諸学会のみならず、国際的、学際的な領域でもその存在が注目されるまでになっています。『大正新脩大蔵経』のデータベース化実現のために必要な具体的計画と知識、手段を有し、加えて日々革新されるコンピュータ世界へ対応する能力を備えたほとんどわが国唯一の組織といえます。

 こうした状況下に、私たちは、先に『大正新脩大蔵経索引』の作成を支援した(財)仏教学術振興会の活動の一部として「大蔵経データベース化支援募金会」を設立いたしました。集められた浄財は(勧募事務費を除き)すべて「SAT」支援のために用いられます。

 私たちは日本の仏教界、そして仏教学界に広く働きかけ、いわば「草の根」的な形で仏教徒の総意を集めて、この事業が完成できればと念じております。何卒、本事業の意義をお汲み取りいただき、勧募に応じていただけますよう、お願い申しあげます。

四 勧募要領

平成12年12月14日

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