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仏教学術振興会設立趣意書

 わが国の産業と文化が近年飛躍的な発展を遂げ、世界における驚異の的となっていることは御同慶の至りであります。これが日本の学界、とりわけ自然科学方面の学者に負うところは多大であり、国家と民間とを問わず、その学術振興のための援助が進められています。

 元来、国力の充実と文化の発展とは、自然科学と精神科学との均衡の上に約束されるものであります。
しかるに近年著しく生活水準が向上しているにもかかわらずその蔭には精神面の閑却から引きおこされた多くの憂うべき事象があり、これが対策については、識者のつとに腐心しているところであります。そのためには、社会の各層にわたる道義の高揚が求められていますが、より根本的には、精神科学方面の学術の振興と普及こそ緊要事であります。

 その中でも、私どもは、仏教が現代文化に果すべき役割について、極めて大きな期待をもっています。
東亜の諸民族に平和の光を投げかけてきた仏教、その仏教の真精神が現代に顕揚されるならば、必ずや人間生活に正しい指針を与え、社会のひずみを匡すものと確信いたします。この仏教の学的研究は優秀な多くの学究者によってすすめられていますが、その研究は十分な助成もなされず、また営利を伴わぬため、その成果の刊行すら意に任せぬ実状であります。

 この点にかんがみまして、この度私ども有志相図り、仏教学術振興会を結成することにより、人間社会に真の平和と幸福をもたらす仏教の学術研究を助成し、併せて世界の最高水準にある仏教学会の成果を内外に顕揚し、人類文化の向上に資することを念願いたします。


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